《電脳警察の機動兵器 U》

 セントラルシティ署の刑事、田村直人は、犯罪組織バイオロンに襲われた工学博士・五十嵐健三と孫のまゆみを救おうとして殉職した。奇しくも五十嵐博士は、警視庁において秘密裏に進められていた「JIBAN計画」の立案者であった。サイボーグドナーに選ばれた田村刑事は、機動警視正、通称機動刑事ジバンとして蘇る。
 対バイオロン法の遂行者として、メタルコンバットスーツと電子警察手帳、携帯火器マクシミリアンタイプ3などのアイテムを基本装備に捜査活動を展開するジバン。彼の追跡・攻撃兵器としてバイカン、スパイラルとともに運用されている機動マシンのひとつが、KK−01 RESON(レゾン)だ。
 レゾンに関するデータは、JIBAN計画の機密事項として、多くが秘匿されている。ポンティアック ファイアバード・トランザムがベースらしいということ。意志を持っているらしいということ。最高速度は時速800キロを出すらしいということ。エンジンシステムは不明だが、ツインターボのスーパーパトであるらしいこと。外観から推測できる特徴として、ステルス無効化高性能レーダーやレーザーレールガン等を装備しているらしい・・・すべてがベールに包まれている。

 実は、JIBAN計画には過去と未来が存在したのではないかと云われている。
 レゾンと同時に開発されたオートバイ型の機動マシン・バイカンは、搭載火器やその管制システム、人工知能などのノウハウを、後に組織される特警ウインスペクター・警視庁特別救急警察隊(WSP)のサポートドロイド・バイクルとウインチェイサーに引き継がれている(らしい)。ウインチェイサーは、その後警視庁が次々と投入する特殊白バイにまで発展する。
 レゾンもまた、WSP行動隊長・ファイヤーが専任運用したウインスコードへとノウハウを引き継いでいると噂されている。開発予算に膨大な投資を行ったレゾンは、JIBAN計画の主たる目的、機動刑事ジバンの捜査補助だけでは、とても投資回収できるものではない。このため、ジバンの活動終了後、レゾンそのものが警視庁に回収され、再改造を施された車輌がウインスコードではないかとも推測されるらしい。その噂は、「ジバンの外観基本設計が、WSPのファイヤーテクター(強化装甲服)やサポートドロイドの基本設計に影響を落としている」との枝葉も耳にする。

 そしてこの度重なる「らしい」は、過去にも遡る。
 レゾンのベースとして扱われているポンティアック ファイアバード・トランザムと、レゾンの「人格」とも言うべき人工知能の関わりである。
 アメリカ合衆国の巨大産業、ナイトインダストリー社が持つメセナ機構の中に、陰の組織として、自社セキュリティから世界的な危機管理と諸対策を担当する「ナイト財団」が存在する。この財団のエージェントが、査察捜査に活用していたナイト2000と呼ばれるスーパービークルが、1982年型のトランザムであった。このトランザムにも、KITTと名付けられた人工知能が搭載され、トランザム自体にも数多くの特殊能力が装備されていた。
 JIBAN計画には、米国政府の介入もあったのかもしれない。KITTの人工知能を構成する電子部品は、日本製の優れた技術が投入され、レゾンにフィードバックされているのではないだろうか。ナイト2000にも、あとからクローズドボディをコンバーチブルに変形させるギミックが組み込まれている。それはウインスコードの覆面パトからWSP仕様ファイヤースコードへの変形ギミックに通じるのだ。もちろん、JIBAN計画そのものの存在が秘匿されているため、その真偽を確かめる術はない。


※ お断り この設定はいつも通り、つくばーどオリジナルです。
レゾンの写真は、ゴンザレスZさんが提供してくださいました。